最近、たくさんの色紙を作家さんに描いてもらって販促を行った
という事で色々言われてた編集さんをSNSで見かけました。
SNSを見ると、批判が有償か無償か、という話が多かったけど
じゃあ有償ならよかったのか、というとそうでもないよ、と
個人的に思うことがあったので備忘録として残します。
 
書店員時代、コミックの販促で、たくさんの色紙を
作家さんに描いてもらって行う販促は気がつけば方法として
何度か目にするようになっていました。
おそらく最初に行った誰かのその施策がうまくいって
その後、じゃあ僕も私も、となってしまったのかも。
 
僕がコミック担当として今年の1月まで書店に在籍していましたが
僕はサイン色紙は、お店が、がんばって飾り付けをしたり
たくさん販売した時に作家さんがくれるご褒美だと思っていました。
 
僕自身、たくさんの色紙をいただく機会があり
いただけると、すごく嬉しかったのですが
これが販促につながっているかというと個人的には
ほぼつながっていないのではないかと思います。
色紙が店内にあると、お客様の中にはうれしそうに眺めてらっしゃる方もいます。
ただ、色紙を見たからといってその本を購入するかと言うと
購入は、なさらない方のほうが多いかと。
ただ、その色紙に描かれた絵を見て、かわいい!かっこいい!と思い
気になって手に取られる方もいるかもしれません。
でも、それ労力としてどうなんでしょ?
 
おそらく出版社側はサイン色紙を送ることにより
売り場を作ってもらえる事を前提に行なっていたのかと
思うのですが、その負担が結局のところ
作家さんに大きくのしかかっているのが。
 
編集さんや営業さんも何もしていないわけではありません。
出来上がった色紙を書店に送る際、色紙が破損しないように梱包したり
送り状を書いたり中に手紙を書いて封筒に入れたりもしたかもしれません
主要な書店さんに伺って営業をしたかもしれません。メールや
小冊子を手作りしたかもしれません。でも、それも重労働です。
 
出版社側がここまでやってしまうと作家さんも
描かないわけにはいかない、という風に思ってしまう
方もいたかもしれません。
 
ここまで作家さん、編集さん、営業さんががんばっても
その方法は徒労に終わる可能性があります。
 
色紙を送って売り場を作って展開してもらって
ただその期間はどれぐらいだったのか、1ヵ月あったのか、とか
店で展開はしたものの大きく売れずその場所をすぐに他の作品に
明け渡したかもしれません
 
送った後のアフターフォローが営業さんや編集さんでどの程度できるかも微妙です。
本当にその色紙は使われたのか、その後も飾ってくれているのか
本当に売り場を作ってもらえたのか、販売実績はどうか。
そこまで追いかけて確認してデータを取り
きちんと作家さんに詳細に報告できたのなら
作家さんも納得しているのなら色紙を描くのも、販売促進としてアリかな、
と思いますがそこまでできている版元さんはないように思います。
(というかできないと思います。)
 
また、作家さんが50枚100枚など多くの色紙を描く時間を
普段の原稿の時間に立てればクオリティーが上がりますが
色紙を描く時間に充ててしまいクオリティが下がる可能性も。
 
クオリティが下がった漫画を読んだ読者が
今月、手を抜きすぎ!とかSNSでつぶやいても
作家さんは色紙100枚描いてたんだよ!とは言えないわけで。
 
編集と作家がお互い納得してやりたくてやっているなら、
と言う意見もあるかもしれませんが
あまりにも施策として重労働な上、効果があったか
曖昧すぎると思います。
 
僕個人の意見ですが、サイン色紙はがんばった書店への
ご褒美で良いのではないかと思います。
もしくは読者に名前入りでプレゼントするとか。
 
その方が作家さんも精神的にも仕事的にも負担が少なく
色紙はあるべき書店に飾ってもらえたり
喜んでくれる読者の手元に届きWINWINではないでしょうか。
 
あの方法もこの方法も試してみよう!でもどれが効果あるかわかんないけど!
は、ちょっとみんながしんどいので。
今一度、販促の方法として作家さんも出版社側も負担が少なく
効果のある方法を業界として考えるべきでは?と思います。
 
おわりー。